幻に心もそぞろ狂おしのわれら将門

  • 2008/04/06(日) 15:04:59

清水邦夫 作 蜷川幸雄 演出

堤真一 主演
(DVDにて鑑賞)


一言で言うと・・・

熱い魂が揺さぶられる何かを感じる舞台・・

と申しましょうか・・

私は学生運動からも浅間山荘事件からも遠い世代の人間です

だから、この演目からその時代の思想と運動とその衰退とを計るというのは
難しい・・

でもどこかに感じるものははっきりとあるのです

理想を追い求め・・現実に叩きのめされ・・

理想こそが実に曖昧で空虚な存在となったとき

人はその空虚を埋めるためにどうするのか・・

特に女として・・桔梗の前にやはり心を動かされてしまう

女が男と対等の強さを求めた時・・

そして男と同じ闘いに身を投じた時

女としての温もりや愛を凍りつかせなければ生きていけない

なんという純粋さなのだろうか・・

その凍りついた魂の中にある温かな悲しみに涙してしまったのです


さて・・感想と言えるのかどうか・・

この作品は好きです
でも・・突きつけられたものに答えを返せない・・

そういう作品でした
取り留めのない戯言になっておりますが、それでもよろしければ
どうぞ・・








「時は平安時代。朝廷に反旗を翻し、一時は隆盛を誇った平将門(堤真一)だが、朝廷軍を指揮する藤原秀郷に追い詰められていく。味方が少数となり、逃げ落ちる将門は途中、頭に大怪我を負い、自分が何者であるかを忘れ、あろうことか自分が将門を狙っている武者であると思い込んでしまう。その将門の狂乱する姿に影武者が混乱するなか、参謀者でもある三郎(段田安則)がなんとか事態を収拾し、窮地からの脱出を図る。しかし、将門の妻、桔梗の前(木村佳乃)は影武者の中から新たな将門を生み出そうと、三郎の弟、五郎を誘惑。さらに五郎も、自らが将門になり代わろうと野心を抱くようになる。一方、三郎は戦地で男に体を売る巫女に身をやつした妹、ゆき女(中嶋朋子)に再会。そして、そのゆき女に狂気の将門が惹かれていく。そんななか、将門一行に藤原の追っ手が迫る…。」

以上WOWWOWより転用のあらすじ

将門というのは人々の理想であり、そして恐れでもあった・・

将門という理想に惹かれて彼の影となる者たち、彼に成り代ろうとする者

舞台全面に巨大な階段が設けられ、天上から仏像が吊り下げられ

ヘリコプターの音と拡声器越しの人の声・・

浅間山荘の赤軍派と落ち武者となった将門軍とが重なる・・

天から雨のように降り注ぐ小石・・

理想の砦が崩れ落ちていくかのようにも見える

将門は自分を失ってしまっている・・

堤さんはそんな将門を実にコミカルに軽快に演じている
これほど重厚な物語でありながらも彼のこの演技によって
滅び行く者たちを美徳で飾るようなものにはせず、まるで嘲笑うかのような印象にさえ思えてしまう
愚かな・・バカらしい話なのさ・・だけど・・それが人間そのものだ・・

堤氏もある意味・・天才
しかも色っぽい・・(色っぽい男に弱いのだ・・私は)

対する段田さんは参謀であり、親友である三郎という役柄を人間の強さと弱さと美醜の双方をバランスを取りながら

静かでありながらも全くと言っていいほどにブレのない演技で見事なまでに見せてくれる

木村さんの桔梗の前は実に共感できた
先述したとおり、桔梗の前は氷のような女でありながら内面に温かな悲しみを秘めている・・

実はそれこそが桔梗の悲劇なのだ

氷の表を持ちながら内に温かさを持ってしまった・・要するに普通の女

氷になりきれなかった彼女の最期の言葉が心に突き刺さる

「私が最も忌み嫌うのは夏の果実のように腐りやすい魂」

三郎に人間とはそういう腐りやすい魂を持つ者なのだ・・と諭されても拒否する桔梗

「生きて魂を腐らせるくらいなら、この肉体を滅ぼしてくれる」

桔梗は愛する将門の目の前で自害する

彼女は人間としての温かさを否定した
その温もりは凍った硬い魂を溶かして腐らせてしまう

悲しい女だ・・彼女をそんな悲しみへと追いやったのは・・
将門という理想そのものなのだ・・

当時の赤軍派の中にはこんな女リーダーもいたはずなのだ
それを責めることができようか?

私にはできない・・

この世が醜く朽ち落ちてしまうくらいならば・・
いっそ滅ぼしてしまえ・・これはもしかしたら過激なテロリズムに通じるものかもしれないが・・

その正体をたどれば・・人の思いの結晶なのだ

理想だけは死しても消えず・・幻となりて、この世を徘徊する

生を持った生身の将門は将門という幻影を追い求め・・それを消そうと行き続ける・・

人間が求めても求めても得られぬものを求めるかのように・・

私は果たして・・生きて腐りつつあるのだろうか?

恐怖とも激情ともつかない何かがこの作品から感じられる・・

それはもしかすると・・将門の怨念・・・だったりするのかもしれない

時代に封じ込められてしまった人々の怨念だとも言える・・

今は・・理想が生きる時代とは言えない・・

理想が怨念に変化して人々を襲う・・そんな時代なのかもしれない









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