近代能楽集〜弱法師〜

  • 2007/09/28(金) 13:13:36

「近代能楽集」は8編の戯曲からなるわけですが
それぞれが独立した物語です

その中の一編がこの「弱法師」

まずはやはり言葉が美しいのが印象に残ります

そして最後まで読んだ
率直な感想は


背筋が寒くなった・・

物語そのものもだけど
やはり竜也は化け物だ・・

こんな化け物みたいな
俊徳を演じることができるのだから

俊徳が化け物なのは

彼がこの世に生きていないから
(幽霊ってわけじゃないですよ)

彼が生きているのは
5歳の時に最後に見た景色

この世の終りの景色

そこに閉じ込められたまま
光を失い
そして光を放っているだけ

物語の舞台は家庭裁判所
二組の夫婦が
俊徳の親権を争っている

実の両親と5歳の時物乞いをしていた目の見えぬ俊徳を
拾い育てた育ての両親

調停委員の桜間級子がこの件を担当している

俊徳は双方の両親を嘲笑うかのような態度をとる

だが

二組の両親はそんな俊徳の言いなりだ

「養い親たちは、あれはもう奴隷ですよ。生みの親たちは救いがたいばかだ!」

俊徳はそう桜間に言い捨てる

やがて、夕日が窓を燃やす・・

目の見えぬ俊徳だが

その赤く燃える景色だけは見ることができるという

この世の終り・・世界が焔に包まれる景色

そしてクライマックス
2ページ以上の独白・・

そう・・まさに俊徳を閉じ込めた瞬間

劇中では7分という長台詞に・・

その言葉は激しいだけではなく
やはり彼はその世界にすがりつくようにそこで生きているのが
伝わってくる

なんという言葉の力か・・

これを台詞として語る役者にとっては拷問ともいえる

竜也がこれを演じるのにどれほど苦しんだかは
様々な場で語られている

あまりに辛い稽古の日々

この世の終りなど見たこともない
まして焔が自分を弄ぶ感覚など知ろうはずもない

「このまま・・(車の)ハンドルを右にきったら・・楽になれるかもしれない・・そう考えた時もある」

こうもらした時もあるほど・・

そしてラストシーン

部屋を出て行こうとする桜間を呼び止めた
最後の言葉


「僕ってね・・どうしてだか、誰からも愛されるんだよ」


そして俊徳は
一人部屋に残される・・

私は最後のこの言葉こそが
彼がどれほど孤独に苦しんできたのかをあらわしているように
思えてならなかった・・

そしてその孤独の闇に背筋が凍るほどの恐怖を感じた

彼がこの世の終りにすがるしか生きる術がなかったのが
ひしひしと伝わる・・

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