「かもめ」 3幕

  • 2008/07/28(月) 00:51:29

この3幕目が・・
実は・・本当に難しい・・

見ていて、一番おもしろく演出されている

チェーホフももしかしたら・・そういう演出を望んでいたのかもしれない
などとも思えてしまう

でもおもしろおかしく笑っていても・・

その裏に人の毒があるのが漂う

3幕目は・・

旅立ちと決別の双方が描かれていて・・

そのどちらもが相反しているようでいて
通じている

悲劇と喜劇が相反していて通じていて

男と女も相反していながら通じていて

親と子も相反していながら通じている

まるで・・

部屋の中央に置かれた大きな鏡に反転して映る自分のように・・

確かにそこに映っているのに・・
決してそちらへは行けない







トレープレフは絶望してやけをおこし
銃で自殺未遂を起してしまう

アルカージナとトリゴーリンはモスクワへ帰る準備をしている

マーシャはトレープレフが重症だったら生きてはいないといいながらも
こんな恋忘れたいから他の男と結婚するという

これは彼のために身を引くのではなく
一つの不幸から逃れて別の不幸を背負ってみようという
不幸の乗り換え・・

マーシャという女がますますわからない・・

アルカージナは自分がかわいい女

自分のためにならない人間は兄であろうが息子であろうが
できるだけ排除しておきたいらしい

一緒に行きたいという兄を邪険にして自殺未遂した息子より
恋人との生活を選ぶ・・

ところがそれでも気が咎めるのか

息子への愛も見せたりはする

トレープレフとアルカージナの親子喧嘩は

まるでハムレットが母ガードルードの寝室で
彼女をののしる場面のようだ

感情を爆発させて彼女と恋人を罵るトレープレフ

だが・・苦悩した叫びではなく
どこか・・幼子がだだをこねるようにジタバタともがき
そうしてオイオイ、ワンワンと泣き喚く・・

「いやだ〜〜〜〜、ママは僕のママなのに〜〜〜
あんなヤツと一緒に行っちゃやだやだ〜〜〜〜〜」

まあ・・こんな感じ・・

はっきり言って・・
この演出・・
竜也さん以外のトレープレフで・・成立するとは思えない

竜也さんだからかわいい
おかしい

しかし・・普通大の男がやったら・・
気持ち悪くて笑えない

トレープレフが去ったかと思うと
今度はトリゴーリンがアルカージナに別れてくれという

若いニーナに心奪われたのだと・・

次はアルカージナがトリゴーリンにだだをこねる番だ

「いやいや〜〜〜〜〜、あんな小娘のどこがいいの〜〜〜〜
あなたは私のものよ〜〜〜〜」

この母にして・・この子あり・・・

トリゴーリンもまた、煮え切らない男
というより・・おそらくはどうでもいいことなのかもしれない

ニーナを置いていってもいいし、アルカージナを置いていってもいい

アルカージナと共に旅立つことにしながら

ついていくというニーナも連れて行く・・

それでも別にかまわない・・

まあ・・どっちでもよかったのだろう

ニーナとアルカージナ・・どちらにも見捨てられたトレープレフと

どちらも手に入れたトリゴーリン

全く相反している

求められるものと見捨てられるもの

けれど・・それすらも・・

通じるものはあるはず・・

永遠に求められるものなどあるはずもない

人は結局永遠を信じはしない

あるのは今鏡に映る自分の姿だけ

それはできるだけ
理想の姿であってほしいと願うもの

鏡の前で自分を飾り・・シナを作ってみるようなもの・・

この3幕はまさにそんな滑稽な人々の姿を映し出す鏡のようなものに映った

メイドが鏡の前で腰をくねらせる姿が実に象徴的・・




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